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浅田飴くうる日記

チベット天空の英雄 ケサル大王

「ケサル大王」は、今なお語り部が存在する世界でもまれな「生きている」叙事詩です。
チベット古代統一王朝「吐藩」撲滅後の群雄割拠の時代の仏教王がモデルとされ、ある日突然語り出すという神懸かり的な語り部たちが聞き手である民衆の理想と願望を基に物語を創り、語り継ぎ、オデッセイやマーハーバーラタを遥かに凌駕する世界最長の英雄叙事詩となりました。チベットの人々は誰でもケサル大王の名前を知っています。ファンタスティックな物語の語りにチベットの人々は何世代も魅了されてきたのです。そして物語には仏教伝来以前のチベット古来の自然観、宗教観が述べられ、文化、社会、歴史などチベットの知識の宝庫なのです。
物語のケサル大王は「戦の英雄」です。しかし東チベットの人々はダライ・ラマ14世を崇拝できません。人々は民族を束ね、仏教を復活させ、大地を回復する「慈悲の英雄」としてケサルを崇めています。ダライ・ラマ法王は「ケサル大王はチベット語圏の人々何世代にも渡って希望と不屈の精神をもたらしてきた」と述べられました。
取材は市場経済の大きな渦に巻き込まれる東チベットの現状もとらえました。草原の荒廃と牧畜民の追い出し、ダライ・ラマ崇拝禁止と仏教信仰の弱体化、学校におけるチベット語及び伝統文化教育の禁止…。
それは北京五輪でのチベット騒乱、その後の焼身抗議(百名を越え、ほとんどが東チベットの人々です)を予感した映像となりました。
中国政府がどこまでケサルを認めるのでしょうか。そしてチベットの人々は折り合いをどうつけて、どうしたたかに自分たちの文化伝統、民族性を守っていくのでしょうか。隣国である日本人にとってこの問題に無関心ではいられません。
(映画紹介より)
チベット天空の英雄 ケサル大王_f0221052_15234977.jpg

★★★☆
by cmonkey3 | 2015-04-02 15:23 | 映画
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